「マネージャー」っていう職種は会社によって定義のブレが大きいようだ。年功序列で給料を上げるための言い訳に利用される側面があったり、きちんとした job description が用意されていないことも珍しくなく、結果なんとなく「古参で偉い人」みたいな雰囲気マネージャーが量産されてる職場も少なくないんじゃないだろうか。

僕も前職の後半はプログラマとマネージャを兼任してたんだけど (というかマネージャ=リードプログラマ、みたいな位置づけになってたと思う) 「マネージメント」っていう仕事の定義が曖昧でどうしても掴みづらかった。結局「マネージャ = チームの雑用係」と脳内変換することでようやく何をすべきなのかが分かってきた気がする。

これにはちゃんと根拠があって、ドラッカーも
Central to this philosophy is the view that people are an organization's most valuable resource and that a manager's job is to prepare and free people to perform.

http://en.wikipedia.org/wiki/Peter_Drucker
マネージャの仕事は(会社の最も重要な資産であるところの)人材がのびのびとその能力を発揮できるよう、周囲の環境を整えてあげることだ、と位置づけている。

オフィスの空調に気を配るとか、最新版のソフトウェアの稟議を出すとか、資料が別部署からまわってこないのを催促しにいくとか、そういった雑務を引き受けて、部下がただひたすら本来の業務(=プログラミング)に集中できるように環境を整えるのがマネージャの仕事なのだ。

ちょっと前に「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という本がベストセラーになった。どちらかというと「偉い人・上司」というイメージのある会社のマネージャ職と、反対に「脇役・下っ端」な野球部のマネージャとを一緒にしてみたのが意外な視点で面白い!…と感じた人もいるかもしれないが、意外でもなんでもない。この二つのマネージャは元から同じものなのだ。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

例えば、前線でプログラミングしつつマネージャもやってね、と言われるのは、つまり「ピッチャーをやりつつ、対外試合の日程組んだり麦茶を用意したりもしてね」と言われるのと同じことだと考えたらいい。
だから、あなたを今日からマネージャに任命します、と伝えたときに「やったー昇進だー!能力が認められた!」と喜ぶ人より、「うわーめんどくせー」という顔をする人の方が、仕事の本質を理解しているので信頼できると思っている。



そうやってマネージメントが何なのかを手探りでこなしていたときにどうしても気になっていたことがある。

チームや部署で歓迎会・送別会・忘年会といった準社内的な行事があるときに、その幹事を最も新しく入った人や最も若い人 (※この二つがイコールではないことは常に意識しておきたい) に振ろうとするマネージャがいるのだ。部署や会社によってはそういうのが伝統化していることも珍しくないようだ。
もっと酷いのになるとそういった雑用を新入りの中でも女子だけに振る人もいる。無意識にやっているのだと思うが、無意識だからこそ根が深くてまずい。

飲み会の幹事を下っ端ではなくマネージャ(あるいは上司)がやるべき理由を以下に挙げておく。

1. 飲み会は勤務時間外だし、飲み会の幹事は普通、部下の job description の範囲ではない
  • そもそも勤務時間外に行われる飲み会を、業務命令として上司が部下に依頼する、という状況にもっとセンシティブでなければいけない。アルコールが飲めない人を飲み会にカジュアルに引っぱり出すということも、もっと深刻に捉えるべきだ。飲み会の幹事を命ずるだけでパワハラだと訴えられても不思議ではない。
  • お金を集めたり予約をしたりといった仕事は結構時間と集中力を消費する。下手すると半日とか丸一日とかとられる。しかし、そういった業務は開発者としての job description にはないはず。入社時に「あなたにはこういう仕事をやってもらいます」と会社との間で交わした契約外の仕事をさせることにも、もっと慎重になるべき。
  • 一方、上に書いたようにマネージャの job description には「業務がスムーズに進むように環境を整えること」がある。チームのコミュニケーションを円滑に進める上で飲み会開催が有効なのであれば、それをオーガナイズするのはマネージャの仕事だといえる。(勿論、参加を強要したら即パワハラなのでそこは注意。断りやすい雰囲気を作るのもマネージャの能力のうちだ。)


2. 社内の雰囲気を把握しているベテランや偉い人の方がなにかとスムーズにいくことが多い
  • 会社によっては歓迎会に補助金を出すところもあるが、その申請をしたり領収書をもらったりといった書類ワークは社内の申請フローに慣れたベテランがやった方が効率が良い。
  • 「行けたら行きます」「やっぱ今日忙しくていけません」みたいな幹事泣かせのいい加減な人達をうまくまとめて、人数と日程を決め、容赦なくお金を取り立てるというのは、やはり偉い人がやった方が人間関係的にも円滑に進む。
  • 大きめのイベントだと、どうしても段取りが悪いとか店のセレクションがイマイチだったみたいな文句が出る。文句を言う方も軽い気持ちだし、ベテランの幹事なら軽く流せるので大したことはないのだけど、新人だと深刻に受け取ってしまいがち。
  • 例えば会費を人数で割ったら一人頭2850円になりましたといった場合、若い人に集金を任せると遠慮して十円単位まで細かくおつりを用意してかえって面倒くさいことになる。ざっくり切り上げて3000円徴収して「150円x40人で6000円も黒字になった!ラッキー!」と堂々と宣言したり、あるいは2000円だけ徴収して残りは自分が多めに出すことで調整する、といった柔軟な技が繰り出せるのは、やはり社内の雰囲気をよく把握しているベテランに限る。


ディレクター職や営業職だと、そういう社内雑用を通して社会経験を積んだり社内の横の人間関係を構築するいいきっかけになるから新人がやるメリットもある、といった意見も出て来そうではある。
ただ少なくともそういった人間関係構築はエンジニアの職域ではないし、人間関係の構築なら一緒に昼飯に行くといった日常生活の範囲でなんとでもできることで、飲み会の幹事が社会人教育として有効であるという議論はやはり必然性に乏しいように思う。
そういう理由をつけたがる人は、結局、面倒な世話仕事を新入りに押し付けるという体育会系文化の呪縛が解けてないだけなんじゃないだろうか。

年末年始、様々な業務時間外イベントを予定している管理職の方々には、いまいちど振り返って考えてみてほしい。




ちなみに現職ではどんな感じかというと、僕自身はもうマネージメントはやってませんが、おかげでほぼ業務のことだけ考えてればいいのでらくちんです。
  • 歓迎会としては、初日にみんなでウェルカムランチに連れて行ってもらいました。
  • 飲み会は、たまーに有志でやることもありますが、やはり勤務時間外は皆それぞれ自分の都合があるし、宗教上の理由でアルコールがだめ、肉がだめ、カフェインがだめ、といった事情の調整が非常に難しい(3〜4人に1人はなにかしら食べ物の制約がある)ので、準業務としての飲み会はまず成り立たないと思います。