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○○社に興味をもっていただき、ありがとうございます。

■当社は、今年度より「新卒」採用を行いません。

古き良き昭和の時代、終身雇用と新卒採用はセットで日本の会社の仕組みを支える重要な基盤でした。同時に、社会人生活の重要な基盤であり、人生の目的でもありました。

しかしこれらは、現代の生き方や社会のしくみにはそぐわなくなっています。

1.  元来、会社での在籍年数と、年齢と、業務におけるレポートラインと、技術の高さと、給料の額と、人間的に尊敬されているかどうかは、それぞれ全く別の話であるべきです。しかし、新卒採用と終身雇用のセットが長らく「在籍年数=年齢=上下関係=給与」という相関を育み、これらを混同させる大きな要因になっていました。この仕組みには安定性という利点もありますが、次に述べるように、過剰な安定性は腐敗や停滞の原因にもなります。新陳代謝の早い今時の社会にはもう合っていないと考えるべきでしょう。

2. ここなどにも述べられているように、人材の流動性は業界の健全性の鍵になります。魅力ある会社にはお金だけでなく人材も集中するのでより成長することができ、魅力のない会社や役目を終えた会社からはお金も人材も流出して行く。そういう仕組みが業界を成長させ、新陳代謝を促進し、健全に保ちます。従って,一つの会社があなたと共に歩める時間は,あなたの生涯のごく一部の期間に過ぎないでしょう。(会社の生涯から見れば全てになるかもしれませんが)。

3. 生産活動が人生の全てである時代は、とうの昔に終わりました。昔は日本人が物を作れば外国が買ってくれ、亭主がお金を家に持って帰れば専業主婦がそれを使ってくれました。しかし今は、良いものを作るだけでは一人前とは言えないのです。一人前の社会人は、良い物を世に出す一人前の生産者であると同時に、良い物にお金を払う一人前の消費者でなければなりません。つまり、会社での労働時間はあなたの生活の半分以上を占有すべきではありません

結論: 会社が若者をかき集め,自分色に染めあげて生涯ロックインする,という方針はこの時代には合わないし、社会貢献のありかたとしても正しいとは言えません


上で述べたようにこの業界は成長著しく、新陳代謝の激しい業界です。2年後、3年後にどの会社が成長しているのか、どのような技術が必要とされているのかを今予測することは困難です。しかし、長年過激化し続けた新卒採用のレースの結果、今年の人材を募集しても、その人達に実際に我々の仲間に加わって頂けるのは1年半も後(しかもその時点で未だ全くのど素人!) 、という異常な事態になってしまっています。

来年4回生に進学予定の学生の皆さんへ。あなたの「新卒」労働者としての価値は、最新の学問を修めたという点にこそあります。これからようやく最終年度を迎える皆さんの本当の価値を、現時点では我々は測りようがありません。

あなたが卒業する再来年の花形産業は、今現在のものとは大きく違っているでしょう。この会社は1年半後にはもう存在していないかもしれないし、その頃にはあなたを必要としていないかもしれません。

そのようなわけで、当社は今年度より「新卒」採用を行いません。


■当社は今年度より、未経験者の一括採用を行います。

とはいえ,新卒採用にもひとつ、人材育成のコストという面での利点があります。

一年半も後にやってくる未経験者よりも、経験豊富でいますぐ即戦力になる人の方がずっと価値があるのはどの会社にとっても同じことです。しかし新しく人を育てる努力をしなければ、その先にあるのは業界の老化と衰退だけです。

新しく人を育てるのには多大なコストがかかります。一年に一度、未経験者をまとめて教育し,確率的に何人か優秀な人が残ってくれれば採算が合うように教育コストをスケールアウトする、というシステムは、人材流動の現代にこそふさわしいスキームだといえます。

ただ、その理屈でいうと、新しく教育する「未経験者」を大学を卒業したばかりの「新卒」に限る理由は何ひとつありません。この業界で一からのスタートをし、新しい血をもたらすことの出来る方であれば誰でも歓迎されるべきです。
そもそも学問をはじめるのはいつからでも遅すぎることはないと言われています。「新卒=若者」という暗黙の了解があるとすればそれは極めて不自然な状態ですし、今後その状態は変わっていくべきであると考えます。

そのような訳で当社では本年度より、一年に一度、4月に未経験の方をまとめて採用し、一年かけて一流の「経験者」に育っていただくプログラムを開始します。募集するのは来春4月から来ていただける未経験者の方です。(いわゆる「新卒」の方、つまり再来年の4月に入社を希望される方は、来年改めてご応募ください。)

社会人の皆さんへ。過去の経験をどう活かし、この業界でのユニークな価値や武器にかえていくことができるか、が、皆さんに求められる資質です。過去の栄光にあぐらをかき、前職での成功譚に終始するだけの方は必要としてはおりません。若い新卒の方々と同じスタートラインについて、スタートダッシュを彼らと競える強い方々を我々は歓迎致します。

学生の皆さんへ。皆さんが競う相手は同年代の学生だけではありません。様々なバックグラウンドや経験値をもつ多種多様な人たちと同じスタートラインに立つことになります。普通免許所持でテニスサークルの副部長で元気に挨拶ができるのも大変結構ではありますが、自分ならではの価値や強みは何なのか、いまいちどよく考えて頂きたいと思います。会社から一方的に育てられるだけの「新卒」から、会社を育てることのできる「新卒」へと、新卒の定義を覆していくことのできる方々を我々は歓迎致します。

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(念のためですが,上記は架空の募集要項です。)

実際のうちの人事はどうかというと,残念ながらごく普通な感じにまとまっちゃっている。
この文章自体の転載改変は自由とするので、これをテンプレートとしてどこか別の企業がこういう取り組みをはじめてくれるといいな。

正直なところ、うちには人を育てる体制がそんなに整っていないので,新卒の人におすすめできる環境ではない。人の手なんか借りずに自力で道を切りひらいていくぞという奇特な人には是非来ていただければ良いと思うけど、そんな人がこの先1年半もじっと入社を待っているものかどうかもまた疑問だ。

そもそもなぜうちが去年になって急に新卒採用を始めたのかと言えば、同業のチームラボやカヤックが面白そうな新卒採用キャンペーンをやって目立っていたのでうらやましくなったというのと、不況で内定取り消しなどが社会問題化している中、ここで新卒採用を始めれば好況をアピールできる!という動機がほとんど全てだと思われる。
まあ,社会に引っ張られていくだけで,社会を引っ張っていこうという発想がない人達が考えることには限界があるので仕方ないのかもしれない。

腕に覚えのあるエンジニアでうちでの仕事に興味のある人は、採用ページとかはスルーして、社員のアカウントを探して直接メッセージを送るのが一番よいと思う。
(俺には送ってこないで。面倒くさいので。)