ちょっと前からサンフランシスコの対岸のオークランドに引っ越してきてます。
オークランドっていうよりイーストベイって言った方が格好良い気がするけど、それは豊洲っていうよりベイエリアって言った方が格好良さげなのと同じ感じ?



引っ越しの理由の第一はもちろん、サンフランシスコ市内の家賃が高すぎるから。
前の部屋は、レントコントロール物件といって毎年の値上がり率が法律で制限されていた。とはいえ、元々の賃料が高い上、上限いっぱいに値上げしてきて今年から$2300/月を超えた。

いや、家賃が高くてもそれに見合った生活ならそれはそれでアリだ。確かに高層階からの見晴らしはよかったし、オフィスは道を挟んですぐ向かいなんだけど、階下に降りればそこは治安の悪さで有名なテンダーロイン地区のすぐ隣。そこはかとなく小便臭が漂い、夜中にはホームレスの奇声が響き渡る。
小銭を求めて片手を前に突き出しながらふらふらとした足取りで近づいてくるぼろきれのような人の姿を見て、ゾンビ映画ってもしかしてこのへんがモデルですか?と妄想したりした。

「サンフランシスコから来たっていうと、皆口を揃えて、いい街だよね!って言うんだ」って聞いた事があるのだけど、ここに住んでオフィスとの間を行き来してる限り、その気持ちが分かる日は来なそうだと思った。そろそろ視点を変えないと。

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サンフランシスコは、内側から見るより外側から見た方が美しい。


■南を目指す者と、湾を渡る者

サンフランシスコ脱出組の行き先には何種類かあって、多分一番メジャーなのはサンノゼなどのある南進ルート。高速道路やカルトレインで繋がっていて、会社のシャトルバスも走っている。

もう一つは、湾を渡って東へ行くルート。
オフィスの前にはBART(地下鉄)の駅がある。この地下鉄で4駅、15分ほども乗れば対岸のオークランドに出る。
本数も結構あるし、乗り換えなしでかなり遠くまでいけるので、車を所持せずにサンフランシスコ市内へのアクセスを確保したい派にはお得な選択肢。東京でいうと埼京線とか湘南新宿ラインのイメージ。

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やはり同じ発想の人も多いみたいで、BART沿線はサンフランシスコ市内と歩調を合わせて軒並み家賃相場が上がっている

BARTのアメリカらしい点は、座席がきったない点。
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アメリカらしくないのは、ラッシュ時はJRとそんなに変わらない混雑度になる点。さすがに埼京線ほどではないけど、混雑してる地下鉄に平気でロードバイク押し込むチャリダーにはイラっとするレベル。




■「車を持たない」という金持ちの特権

車さえあれば、沿線を外れてぐっと家賃の安い地区へもアクセスできるようになるのだけど、サンフランシスコ市内へ向かう道路は慢性的な渋滞。駐車する場所にも苦労する。快適な選択肢とはとても思えない。

この国で「車を持たない」というライフスタイルは、金持ちの新しい特権なのだろう。

低所得者層が自動車で毎朝毎晩渋滞に巻き込まれているのを尻目に、お金持ち達は市内に住んでエコな自転車や公共交通機関で移動し、オーガニックでサステイナブルでベジタリアンな食べ物を食べ、ヨガに通うのだ。


■まあなにやっても結局お金はかかる

2ヶ月くらいかけて地下鉄の沿線を歩き回って、ついに前と同じような条件で$1200/月のワンルームを見つけることができた。ほぼ半額!
ただ、やっぱりすでに市内と変わらない相場になっているエリアも多い。通勤費も考慮すると、お得感を出すのはなかなか難しい。

一方、前の部屋は、自分が住んでいた時から一挙に$500上がって$2800/月ぐらいで賃貸に出た模様。ワンルームで月30万円代...

ちなみに、家賃が半額になったとたん、立て続けに歯の治療が必要になって数千ドル(いくらだったかいちいち覚えるのもあきらめた) あっさり飛んでいった。
お金が余ると、狙いすましたかのごとくなにかしらの臨時支出が発生するというジンクスがある気がするので、支出を抑える努力はひとまずこのくらいにしておこう。これ以上家賃が安くなると、突然不治の病に倒れたりしそう。

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そのテンダーロイン地区の食糧配給所でボランティアをした時に教えてもらったのだけど、サンフランシスコのホームレスに精神疾患系の人が多いのは、70-80年代に公共の保護施設がどんどん閉鎖されてしまって、行き場を失ったのが原因らしい。その後30年もそのままってのがすごい。
(ちなみに、配給所に来るのは収入が低いという以外はごく普通の老人や家族連れ達で、路上の様相とは少し違っていた。)