ブログ論壇の誕生 (文春新書)ブログ論壇の誕生 (文春新書)
著者:佐々木 俊尚
販売元:文藝春秋
発売日:2008-09
おすすめ度:3.5
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著者と同じ名字のブログチームの元締めが,「同僚に配り歩く」と宣言していた本が,予告通り配られたので読んでみました。

要旨は,ネットが新しい言論の舞台として確立されつつあること,その担い手はロストジェネレーション以降の世代であって,団塊以前の世代によるマスメディアと対立している,といったことでしょうか。
「ブログ」というより,ネット全般の話なんですが,その論壇を形成する装置のひとつとして,ブログが果たしていくであろう役割は大きいとは思います。

ただ,本の内容が、そういった世代間あるいは文化間の対立を象徴する最近の出来事のまとめに終始してしまっているため,amazonの書評にもみられるように 「…で ?」 という感想が出てきてしまうのは致し方ないところかもしれません。


読んでいて僕がなんとなく思い出したのは,もう10年近く前になるんでしょうか,「オタキング」こと岡田斗司夫が,海外でもオタクブームがキテル!日本はもっとマンガやアニメを日本の文化であり,商品であり,資源であると自覚すべきだ!とか唱えだした頃のことです。

いまとなっては確かにその方向は間違ってなかったと言えそうですが,実際のところ,彼がそれを提唱しだした当時,彼の著書で述べられているほどにはオタクブームはきてなかったような気がします。
全くの捏造ではなかったものの,彼の著書にあった「アメリカでコスプレイベントが大ブーム」とか「日本に憧れるアジアの若者がこんなに沢山」みたいな話は,実情半分,彼 (と,彼の読者) の願望半分,というのが妥当なところだったようです。(本人自身が後に,あれは確信犯だった,という趣旨のことを言っていたのを見聞きした覚えがあります。)

でも,当時,そういうムーブメントの萌芽は確かにあって,それに彼が名前をつけ,彼自身が「オタクの人」として実体化することで,なんとなく周囲の目がそこにいきやすくなり,ネタに困ったメディアが折に触れて取り上げたりもして,結果,彼の予言を実現する方向に勢いがついた。

この「ブログ論壇の誕生」というタイトルにも,それと丁度同じような,著者の思惑が込められてるんじゃないかと思ったわけです。


客観的に見れば,毎日変態新聞事件にしろ,JJモデルブログ事件にしろ,旧メディア勢力に与えた影響はごく限定的なものだったのだろうと思います。

ただ,それがこれからも限定的であり続けるかといえば,たぶん違う。

この本はきっと,「ブログ論壇」が,ごく当たり前の,第一位のミディアムとして不動の位置についた後で,その巨大なブログ論壇の誕生前夜にあたる数年間をふりかえるクロニクルとして,読まれるべきなのだと思いました。


で,


本書の最後の方に,

「人間の行動を規定するものとして,(1)規範,(2)法律,(3)市場,(4)アーキテクチャ(システムの設計概念),の四種類があり,そのうち最も有効なのは (4)のアーキテクチャか (3)の市場である」

というくだりがあります。

人の行動や世の中の仕組みを変えようと思ったときに,規範によって「〜すべきです」「〜してください」という呼びかけをするよりも,人が望ましい行動をとりやすいように,おのずとそういう行動をとってしまうように,環境や周辺の仕組みを変える方がうまくいく,という話です。

さて,ブログチームは本日,ライブドアブログの新管理画面をリリースしました。

新管理画面は,もちろん見た目がこれまでと大きく違うのですが,デザインを変えるためだけに大きな改修に踏み切ったわけではありません。

新管理画面には,いくつかの新しい機能と,いくつかの (これまでも機能は存在していたけれど) 大きくフィーチャーされ直した機能があります。

それは,あしあと機能ではないし,ひとことメッセージでもありません。

来るべきネット論壇の世において,「ブログ」とはこういう役割を担うものであってほしい,こう使われていてほしい,と,ブログチームが望んでいる形に近づくように,新しく設計したアーキテクチャがこの管理画面です。

その目的がブロガーの皆さんの,無意識的な,あるいは意識的な共感を得ることができるのか,ブログへの関わり方に良い影響を与えていけるのか,しばらく舞台裏で見守ってみたいと思っています。