ライブドアブログの新管理画面には、あまり広告を入れるスペースがない。

後ろの列に座ってるディレクターのところに営業の人がやってきて、その新管理画面に広告を入れる入れないで押し問答をしていた。

ディレクター「いや、そこは広告が入るところじゃないんです」
営業「入れたっていいじゃないか」
ディレクター「なんでこの位置に広告を出すことにそんなに固執するんですか」
営業「なんでこの位置に広告を出さないことにそんなに固執するんですか」

周囲の誰も口を挟まなかったが、それは、その模様を社内IRCで実況中継するのに忙しかったからだ。

話が噛み合ない理由は、たぶんこういうことだ。そのディレクターにとっては、管理画面はユーザの持ち物で、一方、その営業の人にとっては、管理画面は広告主の持ち物だからだ。
だから、ディレクターは、多少なりともユーザの役に立つものでなければ設置する意味がないと思っているし、営業からすれば顧客がいるのにそれを設置しない意味が分からない。

どっちに分があるだろう。

ブログの管理画面はブログの書き手のためにあると考えるのが、やはり普通の感覚だろうか。広告は、「それがなければサービスが存続できない」という点でユーザの役に立つ、という消極的な理由においてのみかろうじて許される,というのが (いまのところ) 最も一般的な見方だと思う。





ところで、ライブドアブログ内の広告の位置や本数は、普通のユーザが気づいているよりもずっと頻繁に調整されている。最終目標は、本当に広告が有用であるときにだけ集中して広告を表示し、それ以外の時には極力何も出さない、という状態にもっていくことなのだけど、それはまだまだトライアンドエラーの途上にある。そして、しばしばこんな感じの厳しい反応をユーザからもらう。

「こんな改悪はユーザの誰も望んでいませんよ。すみやかに元に戻しなさい」
「さすがにこれには心を痛めているスタッフもいるのではないですか」
「広告が邪魔だから消していたのに昨日から急に表示されるようになりました。消す方法をご教授願います」

...分かります。

ただ、ひとつ言っておきたいことがある。

そもそも,僕らはこのサービスに対して,ユーザひとりひとりから月数百円程度の代金を頂くことにはまったく心が痛まない。それ以上の価値のあるサービスを提供しているという自信がある。
 
「自分でサーバたててWordPressインストールすればタダじゃん!」って思う人は,実際に自分で「痛いニュース」でも運営して,サーバが何秒で落とされるか試してみたらいい。あるいは土曜日の朝四時に急にディスクの調子が悪くなって,貴重な土日を泣きながら復旧作業にあてるとかさ。

ライブドアブログのユーザのうち、一部のアクティブなユーザだけでも全員月2〜300円程度のお金を払ってくれたなら,それだけで広告費分をほとんど賄える。定額が嫌なら1投稿につき20円とかでもいい。そのときこそ、文字通り「ユーザの意見が全て」と言えるようになる。それだけで,広告もバナーも一切ない、ただ書き手の利便性だけを追求したインターフェイスを存分に使うことができるはずなのだ。

だけど結局,ネットユーザの大多数はそれを選ばなかった。たった月数百円で快適なサービスを享受することよりも,邪魔でうざいアドセンスや広告やポップアップを取り付ける道を、ユーザ自らが選んだのだ。




で、最初の「ブログの管理画面は誰のものか」というところに話を戻そう。

こうやって考えてみると、「管理画面は100%ユーザのものです」とは断言しにくい。
正確に言うなら、「管理画面には、『ブログの書き手』というユーザ以外に『広告主』というユーザもいる」というべきか。そして、同じサービスのユーザでありながら、この二種類のユーザの利害関係は、不思議と一致しない。

現状では、その二種類のユーザの意見をイーブンに聞かないといけないし、実際、開発人員の半分は今日も、ブログの読み手でも書き手でもなく、広告主のために仕事をしている。



なぜ,ネットのサービスに月数百円程度のお金を払うことを躊躇する人がこんなにいるのかは、よく考えてみたいところだ。僕自身にも心当たりはある。

例えば僕はさっき、自販機で何の気もなしに120円のお茶を買ったところだ。「代金を払った」という認識さえほとんどなかった。一方で、同じ値段の有料iPhoneアプリを購入する際に、一瞬躊躇して損得計算までしている自分がいる。

月額1000円にも満たない MobileMe を使うかどうかさんざ迷ったあげく,結局無料サービスだけでやりくりすることにしたくせに,毎月5〜6000円の電話料金やプロバイダ接続料金を払うことに違和感はない。(というか,これを書こうとしてはじめて,毎月いくら払ってるのか正確に把握していないことに気づいたぐらいだ。)

いったい何が違うんだろうなぁ。



(from intra blog 2008-07-30)