例えばあるサービスのユーザ数が常に一定の倍率で増加し,一年で100万人に達したとすると,6ヶ月目の時点でのユーザ数は
100万x(6/12) = 50万人

...ではなく、
100万(6/12) = 1000人

...である。

つまり、「毎月ユーザ数が前月の約3.16倍になる、という増加率をキープすれば、半年後にはユーザ数が1000人になり、さらにその半年後には100万人に達する」ということ。

ただしこれは、最初に述べたように、ユーザ数が一定数ずつではなく、一定倍で増加するというモデルを前提にした計算結果だ。



なんでこういう話をしだすかというと,

nowa最後の日でも触れられていた,「半年でユーザー50万人獲得」という目標の立て方とその根拠について気になったことがあるからだ。

先日閉鎖したnowaという新ブログサービスには,オープンから8ヶ月で50万ユーザを獲得するという目標が課せられていた。これは
一日の登録数約2000人 x 240日 = 48万人

という皮算用に基づく数字だった。この計算式がね...
ユーザ数の増加を、冒頭の例にあるような定率増加じゃなくて、定数増加を前提とした式だったのだ。

ここで、重要なことを言っておきたい。数学部でもやった話題だけど,

定率増加は指数的な爆発を生むけど、定数増加は生まない。




成長段階にあるサービスはユーザ数が定率増加する (すなわち、指数的に増加する)し、定常状態にあるサービスなら線形増加しかしない。

nowaの計画段階で採用したのが指数増加ではなく線形増加のモデルだったということは、nowaの位置付けが、新しいミニブログという市場を開く、という成長路線ではなく、既存のブログを置き換える、という現状維持路線だったことを意味する。
(だからこの辺りは,CAから縮小均衡と揶揄されてもしょうがないとこだと思うんだよね。)


下のグラフに,定率増加して一年後に100万に達するモデル (オレンジの線) と,定数増加してやはり一年後に100万に達するモデル (紫の線) とを,通常と片対数の両方でプロットしてみた。

対数表示


右の片対数表示の方の紫のプロットを見てもらえば,紫色の線で表された定数増加のグラフが「すでに成熟しきった」段階の成長を表していることがよく分かると思う。

なにしろ最初の月からいきなり一日約2780人x30日=約83000人スタートなのだ。これから新しい市場を開こうという時に想定すべきモデルではないよなぁ。


もし数十万規模のユーザを一から集めるのであれば、ユーザ数が指数的に増加するフェーズがどこかに現れなければいけないだろう。

もちろん、冒頭の計算のように本当に毎月毎月ユーザ数が3.16倍になっていくとすると、一年後に100万人突破したその2ヶ月後には1000万人に到達してしまうわけで、さすがにこれは机上の空論ではある。実際にはもうすこし緩やかなカーブを想定することになるだろうけど。





数学部に参加していた人達なら,ユーザ数の指数爆発を起こすには、「nヶ月目のユーザ数が n-1 ヶ月目のユーザ数に比例する」というモデルが必要になることを知っていると思う。

それらしく数式で書くと、

nヶ月目のユーザ数をUnとして
Un = Un-1 * x

... ならば、Unは結局
Un = U0 * xn

...と表せる

ってやつね。

つまり、ユーザ数が増えれば増えるほど、サービスを知っているひとが増えれば増えるほど、登録者数も比例して増える、というメカニズムを作り込むことが、サービスを急成長させるための鍵になる

「友達がやっているから自分もやる」という心理をつくプロモーションが強い理由はこの点にある。

ただ、一ヶ月あたり、既存ユーザの1%が5人ずつ新規ユーザを呼び込む、という程度 (つまり、nヶ月後のユーザ数が n-1 ヶ月後のユーザ数の1.05倍になる程度) だと、12ヶ月たってもユーザ数はたった1.8倍にしかならない。
毎月1.05倍 → 一年後には1.80倍
毎月1.1倍 →   〃  3.14倍
毎月1.2倍 →   〃  8.92倍
毎月1.3倍 →   〃  23.3倍
毎月1.4倍 →   〃  56.7倍
      ...

なので、「毎月2割増」あたりの壁を超えられかどうかが、急成長が見込めるかどうかの分かれ道になるようだ。

ユーザを呼び込むための施策を考えるときには,それが定数増加ではなく定率増加モデルになっているかどうかを頭の片隅においておくべきだと思う。

なお、一定の倍率で指数増加を続けている間は,片対数グラフのプロットが直線になる。
グラフが右肩上がりになっているのをみて安心している人は,いまいちど縦軸を対数軸に変えてみて、それでもまだ楽観視できる状況かどうか考えてみるといい。


(from intra blog 2008-08-04)