第1回ウェブ学会シンポジウム (#webgakkai) に行ってきました。
まあ,手ぶらで参加しても ustream 見てるのとあまり変わらないんで、次回は是非なにかアウトプット出して行きたいものですね。

このへんで録画が全部見れるようだし、内容をまとめているブログも多々あるようなのでレポートは省きます。個人的に刺激的だったのはセッション2の「ウェブと政治」でした。株式会社サルガッソーの鈴木さん面白い。



以前にもちょっと書きましたが、僕は自分が研究職指向だったこともあって、学術研究とビジネスとをどうやって結びつけたらいいのだろうということを考えることが多くて、今回もそのへんのヒントがないかと思って参加してました。

で、セッション3「ウェブと科学」の、Googleの工藤さんとはてなの伊藤さんの講演をふたつあわせて考えてみると、研究とビジネスの関わり方というか繋げ方の方法論として、こんなことが見えた気がしました。

  • Web を対象にした学術研究の最大の利点は、圧倒的なデータ量により「量が質に転化する」性質を活かせる点にある。

  • だから、Web のビジネスと研究の接点もそのあたりにあるはず。

  • Webにおいて、学術研究とビジネスの間の隔たりを埋めるものは以下の4つ:
    1. 巨大なデータ: (ビジネスの結果として得られる資産。ユーザの活動から生まれる巨大なコーパスとかログとか)
    2. スケールするアーキテクチャ: (KVSとかHadoopとか。Web開発における基幹技術)
    3. スケールするアーキテクチャの上で動作する,スケールする解析技術: (上のレイヤーと、学術研究のレイヤーとの融合。Googleの発表がこの部分にフォーカスしてるので要チェック)
    4. エンドユーザにマッチした見せ方: (ビジネスのレイヤー。はてなの発表がこのへんに言及してる)

  • ビジネスと基幹技術と学術研究とが上の順序で融合するとき,はじめて学術研究の成果とビジネスとが有機的に結びつく。


Web系の企業が「技術指向」などと言うとき,それは主に上の 2 の部分を指しています。

一方,以前から、学術的に面白いものがいまひとつビジネスにならない (普通の人にはけっこうどうでもいい) のがなぜなのか考えていて、それは主に上の 4 が不足していることによるものかと考えていたのですが、実はもうひとつ,3 の部分の欠如が「学術研究とビジネス」のギャップが埋まらない大きな原因なのかもしれないと思えてきました。
(Google の強みはそこを埋める「技術者兼研究者」がたくさん居ることなんですよね。)



上の 1,2 の部分は、たいていの Web企業がなんらかの形で持っているものです。
上の順番からすると、Web企業はまず自分のもっている 1 と 2 を研究者に開放するところからはじめるべきでしょう。そして 3 の部分を研究者と共同で作り上げて、それを最後の 4 でプロダクトに繋げていく、というのが正しいステップなんじゃないかな。

とりあえず、企業が持っているデータや基幹技術を研究用に開放すれば、それだけでもだいぶ目立てるんじゃないでしょうか。

「目立つ」ってのは重要ですよ。

若い研究者や技術者から「おもしろそう」って思われなくなったら,その企業や産業に残されるのは緩やかな死のみだと思います。


(from intra blog 2009-12-08)